地域が支える特殊神事 真木山神社 『能楽奉納』

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 三重と滋賀の県境にほど近い伊賀市槙山に鎮座する真木山神社 (宮司 宮崎忠千代) では、 寶永年間より続く能楽が例年四月十八日の春季例祭に奉納されている。
 その由緒は古く、 寶永年間に大和国の能楽師が京都御所を拝し、 皇大神宮に参宮する道すがら、 京都から近江国信楽谷を経て、 伊賀国白石峠を越え、 この槙山郷にさしかかった時に急な腹痛に襲われた。
 道端で七転八倒の苦しみと闘っていると、 ふと目の前に本神社の鳥居が目に入った。 能楽師は無我夢中で手を合わせ、 一心不乱に 「大神様、 どうぞ私の願いをお聞き届け下さい。 この腹痛を取り除いて下さるならば、 必ずや例祭には能の奉納をさせて頂きます。」 と祈った。
 すると、 たちまち今までの腹痛は嘘のように消えてしまい、 能楽師は大神に幾度も御礼を述べ、 旅を続けたという。
 後にこの能楽師は日本最古の能楽の派 『金春こんぱる流』 の高名な能楽師で、 この時の約束を守り毎年例祭に能楽を奉納したと伝えられている。
 この能楽奉納は、 現在に至るまで連綿として続けられ、 本年も奈良市の金春流能楽師、 金春穂高氏等が境内にある茅葺の能舞台で神前に深々と礼をして 「翁」 などの仕舞を奉納した。
 県内はもとより京都、 奈良からも多くの参詣者で賑わい、 全国的にも有名な神事となっている。
 平成二十年の 『真木山神社合祀百年祭』 に合わせ、 平成十九年五月より本殿及び拝殿の改修事業に着手し、 平成二十年十一月に竣工した。
 祖先から守り続けてきた神事を大切に受け継ぎ、 氏神様をお守りするという強い信念が、 『能楽奉納』 という特殊神事を支えている。
 なお、 昭和五十四年には浩宮徳仁親王殿下がご参拝になられています。

三重県神社庁「みあかり」第17号