特殊神事 やぶねり

 津市白塚町の八雲神社 (宮司山戸敏弘) から海岸に至る約1㎞の間は、 人家が軒をつらね、 漁業や水産加工業に従事する人々が多く住んでいるが、 この一帯を三分した垣内かいとの若者達によって昔から斎行されてきた素朴で勇壮な神事が 『やぶねり』 である。
  『やぶねり』 は八雲神社の例祭日 (7月11日) の夜に行なわれるが、 主役であるやぶは当日の日中に造り上げられる。 早朝に境内に運びこまれた葉のついた青竹をまず8本、 5本、 3本と並べ頭の部分に津島神社 (愛知県) のご神札と白百合のつぼみ8本を封じ、 芯に長い麻縄を通して、 荒縄でしっかりと竹を結んで一抱え程度の束に仕上げる。 これをやぶといい、 各垣内ごとに長さ10間ほどの青年用とやや小ぶりの少年用のやぶが造られる。 夕刻までには三垣内分計六体のやぶが境内に並ぶことになる。 このやぶの形状は津島・八雲神社共通のご祭神である須佐之男すさのお命が退治した八俣大蛇やまたのおろちを模しているとされる。
 日が暮れると、 各垣内の若者達は、 行列を組んで境内社である霞浦神社に参拝し、 出立の祭典のあと、 それぞれのやぶを各町内に運んで 「エンヤナッチャ」 の掛け声とともに激しく練りながら海に向かう。 やぶは大勢の若者に抱えられ、 狭い道一杯に自在にしなって動くので、 予め道路沿いの家の前には柵を設け、 溝には藁束が埋められている。
 1時間ほどの練りが終わると、 満身創痍の姿となったやぶは浜に運ばれ、 やぶの神が津島神社に戻られるように、 頭を北向き (津島神社の方角) にして、 海に流して、 神事を終了する。
 以上のとおり 『やぶねり』 は、 氏子達が文字通り手作りで斎行する、 わが国の祭りの原型をしのばせる神事であるが、 地元に起源や由緒をしるした記録がなく、 また、 近隣に類似の祭りもないので、 不明な点が多い。 口承によれば、 津島神社の 「天王祭」 と同じく、 悪疫退散・除災の祈願に加えて、 海の幸の宝庫である伊勢の海に係わる豊漁祈願の趣旨も含むとされている。
(山戸委員)

三重県神社庁「みあかり」第10号